当院がアレルギー科を標榜していることもあるかと思いますが、皮膚のかゆみ、鼻炎、蕁麻疹などのアレルギーのような症状がみられたので、アレルギー検査をして何が原因かを調べてほしい、と相談されることがしばしばあります。

そもそもその症状は本当にアレルギーの症状でしょうか?
蕁麻疹の原因の60%はアレルギーが関与していない蕁麻疹です。鼻炎の原因も、感染症、単純な刺激、温度変化、運動等による交感神経性鼻炎など実に様々です。

では、その症状がアレルギーによるものが疑われる場合、検査に意味はあるのでしょうか?

ある程度原因が特定できるのであれば、その原因を確認するための検査としてやる意味はなくはありません。
モモを食べて口の中がかゆくなる→モモの抗体を検査をする→陽性であることを確認して、除去する。
ネコを飼いたいが、ネコに触れる度に蕁麻疹が出る→ネコの抗体を検査する→陽性であることを確認して、ネコを飼うのは諦める・・・など。
他に喘息、アトピー性皮膚炎などがある場合に、生活環境を整える目的でハウスダストやダニの抗体価を調べておく、乳幼児で様々な食べ物にアレルギーがあるときに全体をスクリーニングとして調べておくことはあります。
また、ソバ、豆乳、ピーナッツなどの摂取や、蜂に刺されるなどで起こるアナフィラキシーという強いアレルギーは命にかかわることがあるので、アレルギー検査が必要になります。

しかし、ほとんどの場合はアレルギー検査は不要です。
仮にネコのアレルギー検査が陰性であったとしても、ネコに触って蕁麻疹が出るのであれば飼わない方がいいですし、モモを食べてかゆくなるのであれば除去することになります。シラカバ、ハンノキなどのアレルギーで果物や野菜のアレルギーが出ることがあるので、その検査をしてもいいかもしれませんが、やることは除去です。
逆に、ネコのアレルギー検査で陽性であったとしても、ネコに触って問題がなければ(症状が何も出ないのであれば)、ネコを飼ってはいけないということにはなりません。卵のアレルギー検査が陽性であっても、卵を食べて症状が出ないのであれば、摂取は可能です。アレルギー検査で陽性となっても、アレルギーの診断には至らない、ということです。
特定のアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)に反応して症状が出るかどうかがアレルギー診断の最優先であって、アレルギー検査はその症状を確認する手段に過ぎないのです。

さらにアレルギー検査をさほどお勧めしない理由としては、検査代が高いことがあります。1項目調べるのに1,100円かかります。10項目で11,000円(3割負担でも3,300円)です。加えて手技料、判断料などもかかります。病院経営的にはいい検査ですが、患者さんにとっていい検査ではありません。

そして、検査の結果がどうあれ、症状に対する治療はさほど変わらない、ということがあります。アレルギー症状を抑える抗アレルギー薬を中心に加療を行います。ちなみに、蕁麻疹はアレルギーが原因であってもなくてもまずは抗アレルギー薬で治療を開始します。

2011年に米国内科専門医認定機構(ABIM)財団が始めた「Choosing Wisely(賢い選択を)」というキャンペーンがあります。これに賛同した米国の各専門学会が、「患者に不利益を与えている可能性があり、考え直すべきもの」として提示した5つのリストに「アレルギーの評価として非特異的IgE検査や特異的IgE検査を行う」の項目が入っています。

当クリニックでも、診断、治療に結びつかない検査は基本的にお勧めししません。

遅延型食物アレルギーに関して、血中食物抗原特異的IgG抗体検査を行っている施設がありますが、この検査は現在有用性が疑問視されています。ご注意ください。

◆ 日本アレルギー学会〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起
◆ 日本小児アレルギー学会 血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起
安田内科クリニック
埼玉県さいたま市浦和区高砂2-2-20 Kビル2F
TEL 048-835-2188